歯には自己治癒力がないので、虫歯になると、治療しなければ悪化するのみで、自然に治ることはない。それでもかなりひどい状態になるまで放置し、いよいよ我慢ができなくなってから歯科医を受診するという方も少なくないのが現状である。近年は歯科疾患―中でも歯周病―と全身疾患との関連が注目されていることから、今回は阪奈中央病院の歯科口腔外科・丹羽慎弥医師にその点についてお話を伺った。




 
今までは歯周病は口の中だけの問題と考えられていました。しかし、最近では全身にも影響を及ぼすといわれるようになってきました。必ずしも歯周病が原因だということは言えないにせよ、全身が血管でつながっていますから、可能性がないとは言えません。

 歯周病菌が関係すると言われているものとして、心筋梗塞や動脈硬化、肺炎や早産などが挙げられます。例えば誤嚥性肺炎の場合、普通の健康な人ではまずかかることはありませんが、寝たきりの人や身体機能がひどく落ちていて嚥下反射が低下している(飲み込む力が落ちている)人に起こることがあります。

 口の中には何億という細菌が存在しているので、それが血管に入り、血液と共に全身に運ばれて身体、臓器等に何らかの影響を与えたり、また、心疾患をお持ちの方などは感染性心内膜炎になることもあります。



 歯茎から出血する原因の多くは歯周病ですが、まれに血液疾患(白血病など)の初期症状として表れるケースもあります。希なケースですが、口腔内のしびれが、脳腫瘍や白血病の初期症状として出ることもあります。他にも、アフター性口内炎がベーチェット病(口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍、外陰部潰瘍、眼症状、皮膚症状を主症状とする慢性再発性の全身性炎症疾患)の症状の1つであったり、口腔乾燥症だと思っていたのがシェーグレン症候群(涙腺や唾液腺の分泌などを障害する自己免疫疾患の一つ)や、糖尿病である場合もあります。

 また、糖尿病の方は、歯周病を悪化させる可能性が高く、逆に糖尿病をコントロールしないと治療効果が上がらないというケースも見られます。



 歯そのものには自然治癒力がないので、風邪などとは違い、治療しなければ治りません。自分では気づかない部分もたくさんあり、早期発見・早期治療が大切ですし、また世の中の動きとして予防ということも注目されていますので、定期的に受診してチェックを受けた方がいいでしょう。それは、歯だけでなく口腔がんや歯周病、粘膜疾患など口の中に異常がある場合はもちろんのこと、ない場合でも定期的な検査で早期に異常を発見して早期に治療することで、結果的に治療期間が短くなったり、費用が抑えられたり、身体の負担が軽くなったりということにつながることもあるからです。

 また、タバコや酒、様々な科学物質が影響するほか、進行した虫歯がかけてとがっていたり、虫歯などで合わなくなったつめものやカブセが存在し、口腔内粘膜に慢性的な刺激を与えている場合、がんになる可能性があると言われています。虫歯が必ず口腔がんになるというわけではありませんが、何カ月も同じ口内炎が治らないというような場合は、やはり疑うことも必要かも知れません。

 口でものを食べ、口で呼吸をし、口でコミュニケーションをとる―口は呼吸器官や消化器官の入り口、健康の出発点ですから、口内に少しでも不安がある場合は、気軽に相談できるかかりつけ医≠見つけておくことが大切です。

医療法人和幸会 阪奈中央病院
歯科口腔外科
丹羽 慎弥先生
(にわ・しんや)

 平成8年、大阪歯科大学卒。平成13年、同大学院口腔外科学専攻卒。歯学博士。
 大阪歯科大学病院勤務などを経て、平成17年より阪奈中央病院歯科口腔外科勤務。近畿大学附属病院非常勤講師。。



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