小泉構造改革のために、日本では国民の収入格差が広がり、ヒルズ族のような大金持ちが出現する一方で、パート社員やアルバイト従業員など年収が200万円に満たない人達(ワーキングプア)が増加するという事が起きました。さらに、本来低収入とは無縁であるはずの専門職までがワーキングプアに仲間入りするようになりました。
歯科医の話をします。昨年、私は虫歯の治療を受けていたのですが、ある日、窓口で請求された金額を見て、その安さに仰天しました。治療には75分を要したのですが、請求額は何と230円だったのです。その日の診療は保険診療だったので、再診料380円と処置料380円で合計760円、従って、自己負担分(3割)は230円となった訳ですが、こんな低額で歯科医の技術が評価されているという現実を初めて知り、唖然としました。
もちろん歯科診療には従前から混合診療(保険診療と自費診療の併用)が認められているので、自費診療で採算を取ることも出来ますが、この窓口負担が230円という現実は、保険診療だけでは歯科医が確実に破綻することを如実に示しています。医師や歯科医師の所得は基本的には、診療報酬から必要経費(従業員の人件費や家賃など)を差し引いたものですから、前述の75分の診療で診療報酬が760円というのは、お国が歯科医に死ねと言っているのと同じことです。
実際に現在、歯科医の5人に1人は年収が300万以下であり、新規開業した歯科医院の30%が3年で経営危機に陥るか閉鎖に追い込まれているそうです。歯科医の年収が少ない原因は、前述のように診療報酬が労働対価としては低すぎることと、歯科医院の乱立(全国で6万7千軒、ちなみにコンビニは4万軒)が挙げられます。歯科医院の乱立は歯科医の増加のためですが(1960年には7校しかなかった歯学部が2007年には29校にまで増えた)、歯学部の増加といい、診療報酬の抑制といい、我が国の施策は完全に誤っています。この誤りは一刻も早く是正せねばなりませんが、国民も医療崩壊のツケは結局自分達に回ってくることを理解せねばなりません。
次回は他の例も挙げて、専門職を大事にしないと、国の滅亡が待っていることを論じてみます。